お金がないのにギャンブル中毒の30歳・伊藤カイジ(藤原竜也)は、ひょんなことから、高利貸しにお金を借りた友人の連帯保証人になる。ある日その友人が返済しなかったため、カイジは「何百万円という借金と利息を返済」もしくは「クルーズ船に乗り、勝てば大金が得られるカードゲームで勝負する」という二つの選択肢が与えられる。ゲームで大失敗したカイジは、地下にある地獄のような場所に送られ、勝ってそこから出るチャンスは一度しかない生死を掛けた勝負に参加させられることに…。
『カイジ 人生逆転ゲーム』のストーリーは、原作である人気漫画を脚色したもの。監督は20年以上続いている漫画『カイジ』を映画に取り込んだ。鑑賞する際には、この映画は漫画が原作だと知っておいた方がいいだろう。というのも、表現が非常に大げさで、ばかげているように”あえて”作られているからだ。
ユーモラスな場面が多い中、カイジが富とは何かについて興味深いことを言っている。この映画の中のお金持ちは、極悪非道で普通の人々の苦悩を理解できない人々として描かれている。本作品の重要なメッセージの一つは、「貧しい人はお金を稼ぐために一生懸命働かず、その代わりに一回の大チャンスに懸けるので、ずっと貧しいままでいる」というものだ。現実ではどうかわからないが、監督と脚本家たちはそう考えているはずだ。
キャストに関しては、有名俳優も出演しているが、巧妙さに欠けている。悲惨な経済状況と深刻な危機に直面する絶望的な男を演じる藤原竜也は、素晴らしい時もあるが、非常に下手な時もある。俳優陣は、落ち込んでいるか叫んでいるかの二つしか表現方法がないかのようだ。しかし、これは嫌いな人も多いが、大好きな日本の典型的実写演技だ。もっと深みのある映画にするにも、残念ながら多くのキャストにはどうしようもないことである。
高層ビルのシーンを見ると、この映画の本当のコストがわかるだろう(ネタバレ注意:個人的にはお粗末だと感じた)。グリーンバックの合成は、俳優が空高い部分ではなく、地面から50センチほどの高さの梁でバランスをとっているだけというのが明らかにわかるほど悪い。同シーンでは、梁を渡るゲームの参加者が娘のために犠牲になる場面があるが、そこでも演技の失敗が見られる。高層ビルに架けられた梁の上で叫んでも、心温まる場面は描けまい。
この映画を要約するのは簡単ではないが、もし不信に目をつぶって見ることができれば、カイジと彼の冒険を大いに楽しむことができるはずだ。演技は見事ではないがストーリーは面白いので、映画は最後まで見ることができるものとなっている。また2009年に同作が上映されたのち、中国で『カイジ 動物世界』というタイトルでリメイクされた。後半のストーリーは変更されており、自警ピエロが登場しおバカな要素を加えている。日本版が気に入った方は、こちらも見てみるとよいだろう。